EXCELLENT SMEs ARE LOCAL TREASURES!
九州には知ってほしい中小企業がたくさんある。知られていないことは存在しないに等しい。小なりと言えども生き続けている中小企業の努力と実績を私たちはもっと知るべきだ。企業は法人税を納め、雇用を維持し、有用な商品やサービスを提供し続け、これらの活動によって地域に貢献している。知られることにより、そこで働きたいと思う人が増え、連携したいと思う企業が増え、その企業で働く人々とその家族の誇りとモチベーションが高まる。そうなるようにと期待を込めて、今回は、蓄積された技術力を生かし挑戦を続ける「株式会社竹嶋繊維」(福岡県柳川市)、お客さまから必要とされる、柔軟で軽やかな鋼材屋を目指す「丸久鋼材株式会社」(福岡県久留米市)を紹介する。
若林宗男(わかばやし・むねお)/事業構想大学院大学客員教授。内閣府地域活性化伝道師。(一社)九州観光機構アドバイザー。国際基督教大学教養学部卒業。株式会社テレビ東京のニューヨーク支社を開設し支社長兼特派員として活動。ワールドビジネスサテライトを企画し、初代ニュースキャスターを担当。インターネット黎明期の1995年にテレビ東京のホームページを開設。2011年、福岡市に移住。地域社会と中小企業をサポートする若林ビジネスサポートを設立。「すばらしい風景写真を見ると、人はその場所に行きたくなる」ことに着目して2018年に絶景九州プロジェクトを開始。Facebookで絶景九州グループを作り絶景九州写真を集め、九州観光をサポートしている。絶景九州グループの参加者は2022年8月末現在、31,700人。そのうち16%は海外から参加している。九州通訳・翻訳者・ガイド協会、福岡デザインアクション(FUDA)、九州の食、ふるさと創成の会等の一般社団法人で理事を務めている。
若林 宗男(著) 一般社団法人九州北部信用金庫協会(編集)
遊撃する中小企業
福岡 佐賀 長崎
注目の企業15社 第2弾
元気な中小企業は、地域の宝!地域経済を牽引する数多の中小企業のなかから、注目すべき福岡・佐賀・長崎の元気企業15社を紹介。波乱万丈の物語から、地域に愛される秘訣、世界に誇れる技術など、企業と地域を元気にするヒントがここに!
目次
まえがき
1 コスモ海洋株式会社
2 オーエーセンター株式会社
3 株式会社ナダヨシ
4 株式会社アプリップリ
5 後藤の饅頭
6 株式会社丸屋
7 丸久鋼材株式会社
8 株式会社谷田建設
9 木下木芸
10 株式会社竹嶋繊維
11 株式会社大和製菓
12 そのぎ茶温泉株式会社
13 株式会社とわに
14 有限会社エトワール・ホリエ
15 合資会社林醤油本店
あとがきに代えて
出版社 : 梓書院
発売日 : 2021/7/31
単行本(ソフトカバー) : 200ページ
定価 : 1,430円(本体1,300円+税)
株式会社竹嶋繊維
福岡県柳川市
「着る虫除インナー」が販売好調
蓄積された技術力を生かし挑戦を続ける
●創業/1977年
●事業内容/縫製業
●従業員数/33名
●所在地/福岡県柳川市大和町皿垣開908-2
●経営理念/縁尋機妙(仏教語で、縁が縁を呼んで幸福を招くの意)
1977年創業で、普段はおもに日本大手のインナー製品やスポーツインナーウェアなどを製造している竹嶋繊維。当初は100%老舗からの受注で成り立っていたものの、海外生産の影響で加工賃が安くなり、仕事はあるのに売り上げの減少が続いた。そういった現状を打破するために外注を整理したり、管理し直すことで、信頼できる会社と連携し、仕事ができるようになり、品質向上につながり、多くの大手メーカーからの受注を維持できている。
その一方で、2010年から自社ブランドでの製造販売に挑戦した。しかし、企画料が高くついて、売上は上がるのに利益が残らない状況が続いた。竹嶋紀年社長は、「何千枚、何万枚を売るとなると、当社には無理でした。いい勉強になりました。そこで当社はつくるプロに徹することに決めました」と話す。
主に婦人用下着を作ってきた同社だが、コロナ禍にあって、畑違いの医療用ガウンをつくる仕事が舞い込んだ。それも一度に50万着を納める仕事だった。
同業社に声を掛けて手伝ってもらっても、これだけの量となれば社員に残業をしてもらわなければならなかった。時間外労働の上限規制のため労働基準監督署に出向き事前に相談すると「柳川にもそういう会社があったとは知らなかった。うれしいことですから、がんばってやってください」と理解してくれた。
「諦めずに取り組んでみたら、同業者の協力も得られ、労基署の理解も得られ、できてしまいました。当社は日本を代表する下着メーカーの縫製を引き受けてきましたので、下着の縫製には自信があります。しかし、当社の縫製能力や縫製工程の管理能力を下着の世界だけに閉じ込めておいてはいけないと思い、医療用ガウンの仕事に挑戦しました」
そんななか動き出したのが、防虫機能と接触冷感、UVカット、吸汗・速乾、伸縮性の5種の機能を兼ね備えた「着る虫除インナー」のプロジェクトだった。
同社初のクラウドファンディングでのプロジェクトだったが達成率700%超えの好評で、続く第二弾は要望に応えてカラーバリエーションを5色追加。メイドインジャパンの品質、誰もが気軽にさっと着るだけ、シンプルなデザインでリピーター続出の人気になって、インターネット通販「楽天市場」で販売を開始。竹嶋繊維は新しい広がりを見せている。
着る虫除インナー
アームカバー・レッグカバー
普段着・仕事着・アクティブなシーンまで、シンプルなデザインでどんな場面でも大活躍!部分使いもできて作業時だけの装着も可能。ゴルフにも最適!アーム/¥1,980・レッグ/¥2,480各SS~3Lサイズがあるのでジャストサイズが選べる!他にも、ロングタイプもあり、レディースサイズも人気。
楽天市場販売ページ ▶
EXCELLENT SMEs ARE LOCAL TREASURES!
丸久鋼材株式会社
福岡県久留米市
目指すはお客さまから必要とされる鋼材屋
硬くて重い鉄の会社を支える、明るくて軽快な女性たち
●創業/1966年
●事業内容/一般建築用鋼材・鋼板の卸売および加工
●従業員数/105名
●所在地/福岡県久留米市太郎原1498-1
●経営理念/物づくり・人づくり
1966年創業で、顧客のニーズに合わせた鋼材のオーダーメイド加工、さらには溶接までを手がける丸久鋼材。待鳥寿社長は、「この10年ぐらいはロボットによる溶接の需要が非常に増えてきました。お客さまの依頼に合わせて対応し、機械と業界が進化した結果です」と話す。
同業者は福岡県南部の筑後地区だけでも7社もあり、鋼板は高炉メーカーから仕入れ、加工する機械は機械メーカーの汎用品。だからこそ、お客さまに選ばれる会社になるためにどこで競争するのかを考えなければならない。
「営業が重要です。なかでも発注や問い合わせでお客さまとの接点になる電話対応が特に重要だと考えています」
同社では、電話を受けた女性が明るい声で対応することはもちろん、電話で話した顧客の会社に営業担当と一緒に訪問する。すると互いに親近感が湧き、お互いに相手の顔を見て話したこともあって、次に電話を受ける時にプラスになるという。
「製品の仕上げと梱包にも力を入れています。梱包はすぐに解かれますが、きれいに梱包してあると、製品を受け取った時の印象が違います。梱包を開いて初めて製品を見た時に、製品がきちんと重ねて並べられ、一つひとつがきれいに磨かれ、そのまま組み立てられるという状態になっていれば、『お、やるね!』と思っていただけます」
これらの取り組みは、顧客満足度を高めることの重要性を社員みんなが理解し、鋼材を顧客の要望に応じて加工し、建築現場ですぐに使える鋼材として納品するという社員の誇りもつながっている。
工場で活躍する女性社員について、「現場を見せてこんなに大変なところだよと言ったのですが、それでも現場で働きたいと言うので現場に配属しました。鉄というと重たいですが、手でかつぐわけではなく、女性でも働けることが分かりました。今後は女性が工場の現場でもっと働けるような会社にしていきたい」と待鳥社長。
全社員が主催するまちおこしの祭り「喜業祭」での社員集合写真(2019年、第9回)。会場となる本社では、エコ商品展示会や工場見学、ダンスや和太鼓演奏、屋台が多数出店して、地域貢献はもちろん、取引先や仕入れ先、社員の家族の誰でも参加できる祭りとして、地域住民や他部のスタッフとのコミュニケーションの場として役立てている。
「以前は社員募集を工業高校だけに出していましたが、今は商業科や普通科の高校にも出しています。同じ機械を使えば同じ品物ができますから工業高校卒でも大学卒でも全く関係ないです。それに当社の工場では、女性社員も働いています」
待鳥社長が、女性を現場でも起用したいと思ったのは、優秀な女性社員の仕事ぶりに感心したのがきっかけだった。以前、ベトナムのハノイに駐在員事務所を開設し、現地で人を雇って、機械を動かすためのデータづくりの計画を進めていた。結果としては、駐在員事務所は商売をしたらダメだということがわかり閉鎖したが、その時、所長を務めていたのは、久留米本社のCAD室で仕事をしていた女性だった。
「彼女は帰国してから、どうすれば一番よいのかを考え、CADの仕事の働き方や無駄なことなどの整理をしてくれました。彼女は当社で初めての女性の取締役になりました」
工場で働く女性社員については、最初は営業のサポートや事務所への配属を考えていたが、本人たっての希望での工場配属だった。当初は男性陣への刺激や現場の雰囲気が明るくなることを期待していたが、なにより女性でも工場で働けることが分かったことで、今後は女性が工場の現場でもっと働けるような会社にしていきたいと考えるようになったという。
「社員とのコミュニケーションの深化のために、年に2回、社員全員と面談をしていますが、そうして社員の話を聞く中で、職場環境が改善された事例もあります。社員の声に会社が応えることも大切にしています」
同社の加工工場は、久留米本社と唐津営業所のほか、2020年4月からは、久留米市北野町で溶接加工に特化した新工場が稼働している。北野工場は、溶接の職人が減っていたり、関係先の鉄工所が後継問題で廃業するケースが増えるなか、応援できることはないかと考え新設したという。
「今後は、久留米工場、唐津工場、北野工場の3つ工場が、支え合い補い合って3本の矢になり、1+1+1を3よりも大きくするのが理想です。それを実現するために、3つの職場の社員の交流や親交を深めていきたいと思っています」
また、地域貢献を大切にする同社では、日頃の感謝の意味を込めて全社員が主催するまちおこしの祭り「喜業祭」を久留米本社で開催している。コロナ禍で2020年から開催できていないが、地域住民をはじめ、取引先や仕入れ先、社員の家族の誰でも参加できる祭りとあって、この地区の恒例行事となっている。
「まだまだ小さな会社でいろいろと課題はありますが、お客さまから必要とされる鋼材屋として、少しずつ成長していると感じますので、粘り強くやっていきたい」
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