筑後川の大きな2つの支流、大山川と玖珠川は、阿蘇外輪山と九重連山に発し、日田盆地で合流、夜明渓谷をくだり、筑後平野を蛇行して溜滔と有明海に流れ込む。筑後川と分水嶺を共有する姉妹川の矢部川も筑後平野を経て有明海に流れる。この両河川流域では太古より人が住みつき、特色ある生活文化を育んできた歴史があり、流域の変化に富む多くの景勝地もその遺産のひとつだ。
この流域のすばらしい自然、積み重ねた歴史、味わい深い文化をテーマとして、親しみやすく楽しんでもらおうとするのが「筑後川まるごとリバーパーク構想」だ。
筑後川・矢部川流域には、雄大な自然の中、開放感とともに、初めて食べる果物のような、汗を流し皆で感じ合える満足感のような、流域でしかなし得ない感動がふんだんにある。これら多彩な文化や環境資源と、地元の流域活動家の方々を点から線につなぐことで、「一生の思い出」がつくれるような感動や体感が生まれる。さらにコミュニティをネットワーク化することで、地域コミュニティの構築、環境保全までを目標にしている。
筑後川・矢部川流域では、変化に富んだ美しく魅力的な景観を各所で目にすることができるのはもちろん、徐福伝説、吉野ケ里遺跡、彩色古
墳などがあり、邪馬台国九州説の有力候補地であるなど、古い歴史もある。ユネスコ無形文化遺産になっている「日田の祇園祭」、久留米の「鬼追い」の火祭り、八女の「幸若舞」などに代表されるように、由緒のある祭をあげると枚挙にいとまがない。
小石原・小鹿田の陶芸、大川の木工、八女の仏壇・提灯・和紙、久留米絣など、伝統工芸品も多い。ブドウ、カキ、クリ、ナシなどの果物も豊富で、アユ、ヤマメ、ウナギなどの淡水魚に加え、有明海ではノリ、アサリ、エツ、ワラスボ、ウミタケなど独特の海産物がある。そしてなによりも至るところで温泉が湧く。筑後川まるごとリバーパークは、筑後川・矢部川流域を「自然」「歴史」「文化」をテーマとした一つのテーマパークとみなすことで、これらの豊富な資源を広域的観光に生かそう
というものだ。それは両流域において持続可能で質の高い生活を実現するための資源活用の枠組みであり、プラットフォームである。色々な人が様々なやり方でこの枠組みに参加することで、内容が充実する。
テーマは無限といえるほどあり、永遠に続く活動である。筑後川まるごとリバーパークはテーマパークとしては広大であり、テーマパーク内の地域特性に応じて
11のゾーンに分けられている。次号からは、各ゾーンの魅力に触れてみたい。
〈筑後川入道・九仙坊(きゅうせんぼう)プロフィール〉 久留米大学名誉教授、一般社団法人筑後川プロジェクト協会代表理事。入道とは俗界に身を置きながら仏門に帰依すること。筑後川入道と名乗ったのは、目的を果たすために従来のしがらみにとらわれず、自由に発想し、自由に生きるため。このコラムでは、忌憚のない“筑後川入道”の生の声をお届けします。
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