筑後川流域の経済観光振興への活動発信を行う総合情報サイト

駄田井正(だたい・ただし)

一般社団法人 筑後川プロジェクト協会代表理事。1944年生まれ、大阪府堺市出身。1970年に久留米大学に赴任、2014年に退職、久留米大学名誉教授。経済学博士。専門は文化経済学。 1999年に筑後川流域連携倶楽部を立ち上げ、筑後川・矢部川流域を一体的にとらえて、持続可能で質の高い生活の実現を目指してきている。著書に、『文化の時代の経済学入門』(2011)、『筑後川まるごと博物館』(2019)などがある。目下の活動は、筑後川・矢部川流域のもつ自然・文化・歴史・社会的価値を経済的価値に転換することに集中している。

関文彦(せき・ふみひこ)

株式会社関家具の創業者で代表取締役社長。一般社団法人 筑後川プロジェクト協会会長。1942年生まれ、福岡県大川市出身。福岡大学商学部卒業後、1968年に家具卸の関家具を創業。以来、黒字経営継続中で家具卸売業界で売上日本一。「日本一の家具産地大川」を盛り上げたいと地域活性化をはじめとした社会貢献活動に積極的に取り組む。トレードマークは黒いシャツに黒いジャケット、赤いネクタイ。趣味は世界の秘境巡り。

社会的な活動を
経済的な活動につなげたい

──筑後川プロジェクト協会とはどのような組織なのでしょうか。

駄田井 久留米大学と国土交通省、筑後川・矢部川流域自治体やその外郭団体、民間団体や企業が一緒になって、流域全体の持続可能で質の高い生活を実現することを目的に、20年以上さまざまな活動を続けてきました。これまで取り組んできた「筑後川まるごと博物館」「筑後川まるごとリバーパーク」「筑後川ブランド」などの事業を総じて「筑後川プロジェクト」と称し、同プロジェクトが生み出す自然環境価値、文化的価値、社会的価値を経済的価値に転換する事業の実践のための組織として「一般社団法人 筑後川プロジェクト協会」を立ち上げました。そして、これまでの「環境保全」や「文化の保全」といった社会的な活動をどうにかして経済的な活動に結びつけたい、という思いから尊敬する経済人であり、地域振興活動にも積極的に取り組んでおられる関社長に、筑後川プロジェクト協会の会長をお願いしました。

 筑後川、矢部川は筑後川平野の二大河川であり、駄田井先生はこの流域を学術的に研究してこられ、地方創生に早くから着目し、日本という国を安定させるためには、大都市だけでなく、地方の活性化が重要という考えを持たれています。私はそのお考えに共鳴して、共に活動させていただいています。もちろん、大川で生まれ、筑後川で泳ぎを覚えた私は、筑後川が好きで、大川というまちを活性化したいという思いがありますが、いち経済人、商売人である私が駄田井先生にご教授いただき、筑後川流域の学術的な価値を認識するに至りました。大川が家具の一大産地となったのも筑後川があるおかげなんです。

一般社団法人 筑後川プロジェクト協会の会長・関文彦社長と代表理事・駄田井正先生。それぞれの地域創生に対する思い、そして、地域振興活動に共に取り組む二人が、どのように出会い、現在の活動にまでつながっているのか。筑後川流域文化経済創生マガジン『CHIKUGOGAWA.Biz』の創刊記念対談としてお話をうかがいました。
司会進行/筑後川リバーパークアンバサダーのローラさん
取材日/2021年4月20日

Laura(ローラ)

モデル・タレント・ダンサー。福岡県福岡市出身。フランス人の父、日本(長崎県壱岐市)の母から生まれる。高校卒業後、フランスへ6年間留学。25歳で日本へ帰国後、モデル業界へ。ファッションショー、広告、CM、ラジオ、ダンスなど、福岡を中心に活動。筑後川リバーパークアンバサダーを務める。

「楽しくなければ、仕事じゃない」
「学ぶ、遊ぶ、仕事を一体的に」

──関社長と駄田井先生の出会いのきっかけやお互いの印象をお聞かせください。

 出会う前から駄田井先生の存在は知っていましたが、友人の紹介でお手伝いを始めたのがきっかけです。駄田井先生は、大学教授らしい知的な部分と野生的な部分があり、とてもたくましい人だという印象で、こんな先生に色々と教えていただけるのはありがたいという思いで、ここ数年、お付き合いいただき、ご指導いただいています。

駄田井 関社長は、関家具を一代で築き上げられた経済人であり、とても尊敬しています。また、「楽しくなければ、仕事じゃない」という経営の精神に、私はとても共鳴しました。筑後川プロジェクトには「学ぶ」「遊ぶ」「仕事」という3つの柱があります。「学ぶ」が筑後川まるごと博物館、「遊ぶ」が筑後川まるごとリバーパーク、「仕事」が筑後川ブランドで、流域全体を盛り上げるには、これらが一体となることが重要です。実業家、スポーツ選手、研究者などをみても成功している人、長く続けられている人は「学ぶ」「遊ぶ」「仕事」が一体となっていることが多いです。関社長の経営の精神は、まさにこれですね。

 私は、社員に自主的に主体性を持って、能動的に仕事をやってもらいたい。それには社員にやりたいことをやってもらうのが一番だと思っています。社員が色々な事業部を発案して、東京の一等地に店を出すといった、私では思いつかないようなことができているのも社員のおかげなんです。

駄田井 また、関社長はピラミッド型の組織ではなく、大川の企業がネットワークをつくって、家具産地・大川として一体となって発展していく「オール大川株式会社」を目指しておられます。こういった地域分業のような考え方は地域活性化にとってとても大事なことだと思います。

──社会活動と企業活動の形は違っていても、お二人は物事を進める上で大切にしていることや人との接し方など、共通している部分が多いですね。

駄田井 これからの社会は多品種少量生産になり、ゆくゆくは一商品一生産などのオーダーメイドになっていくと思っています。そうなると生産者には「遊び心」が大切になってくる。社員が遊び心を持って、生き生きとしている会社でなければ、オーダーメイド生産の社会では、お客さまはついてこないのではないでしょうか。

 遊び心を持つことや物を大事にすること、人を大事にすることが、戦後の日本で失われてしまったようにも感じます。これらは本来の日本の文化といえるものではないでしょうか。

筑後川の恵みや
素晴らしさを伝えたい

──失われたかもしれない日本の良さですね。豊かな自然を生かした暮らしもそうですね。

駄田井 筑後川流域の中流、下流域は昔、土地がとても肥えていました。それは、洪水があり、川から流されてきた栄養があったからです。最近では、人が住んでいるところに被害は出ないが、人が住んでいないところに水を溢れさせる流域治水の一つである「霞堤(かすみてい)」と呼ばれる対策が注目されていますが、これは戦国時代から伝わる伝統的な治水方法です。また、アフガンで治水に取り組んだ中村哲さんが、江戸時代につくられた筑後川の山田堰を参考にしたように、現代でも学ぶべきことが筑後川にはたくさん残っています。昔の人は重機がない分、自然の地形から学び、生かした知恵があったんですね。

 子供の頃、筑後平野では「堀干し」が年中行事で、クリーク(水路)に溜まった泥を栄養を与えるために田んぼに入れるということをやっていました。堀をきれいにするので、魚もたくさん泳いでいましたし、堀干しをした時に獲れる魚を食料にもしていました。堀干しはとてもきつい仕事で一人ではできないので、地域住民総出の作業になり、連帯感も生まれました。今もう一度、地域の皆で堀干しをするのもいいかもしれませんね。

──これまでの活動も含め、流域連携を軸とした筑後川流域全体の地域創生に課題も見つかっていると思いますが、筑後川プロジェクトが取り組むべき今後の課題とは何でしょうか。

駄田井 私は筑後川流域は素晴らしいところで、世界の中でも最上位に入る豊かな土地だと思っていますので、さまざまな活動を通じてそれを伝えていくことです。一方で、これからの未来、何があるかわかりません。新型コロナウイルスで世界がこうなることを予測した人はいないでしょうし、今後、気候変動や大規模な地震などもあるかもしれませんし、思いもしなかったような社会的な問題が起きるかもしれません。そういったことが起きた時にもびくともしない地域という意味も含め、持続可能で質の高い生活を実現できる筑後川流域を目指していきたい。

 私は筑後川流域の皆さまが、自然の摂理のもとに生きていた姿に還り、筑後川の流れや豊かな自然を活用していけるように、駄田井先生には、これからもご指導いただき、活動を共にしていければ幸いです。

──最後に、地域創生に取り組む皆さまや読者へのメッセージはありますか。

 筑後川プロジェクトをきっかけに筑後川にもっと興味や関心を持ってほしいです。筑後川の流れにどれほどの恵みがあるのかを知ってほしい。

駄田井 特に子育てをしているような女性に関心を持ってほしいと思います。男性は熱意はあっても仕事が忙しかったり、しがらみがあったりという人も多いでしょうから、女性に地方創生や地域活性化において、これまでよりもっと役割を担っていただき、活躍してもらいたいですね。

1968年(昭和43年)の創業以来、黒字経営継続中で年商174億(2020年5月期)、家具卸売業界で売上日本一を誇る家具の総合商社・㈱関家具(福岡県大川市)。室町時代から続く家具の生産地「大川」に生まれた関文彦社長がたった一人で創業し、小規模商魂組織として成長を続けてきた同社の新時代経営論「ザ・関家具イズム」とは。

ザ・関家具イズム

 家具のデザイン、企画、生産の機能をも持ったメーカー商社的な企業であり、社員数はグループ全体で522名(2021年4月時点)で、文字通り家具産地・大川を牽引する関家具。それを支えているのが「ザ・関家具イズム」とも呼べる関文彦社長の経営論だ。
 関家具には「関家具経営の心得13か条」がある。これは関社長の「KKD(経験・勘・度胸)経営」から調査・分析・実行・反省という経験をデータベースとして残して、予測を加え経営計画を立て、PDC(プラン→ドゥ→チェック)を繰り返すという方向にシフトするための試みで、「KKD経営」の数値化だったという。
「ゼロから始めた関家具は、商魂の通った、いわゆるゲリラ戦法でした。しかし、規模が大きくなるにつれ、ゲリラ戦法だけでは限界があることもわかっていました。次は師団の戦いをしなければなりません。全てを完結できる一個師団であり、それぞれがエキスパートとして活躍できる組織です」(関社長)

「ホット」で「クール」

 「関家具経営の心得13か条」には、関社長の座右の銘である「棺桶に片足を突っ込み、後の片足を突っ込む寸前まで、火の魂のように生きる」や「クールにビジネスライクに感情抜き」などがある。「火の魂のように」と「クール」は相反する言葉だが、「ビジネスマインドは理想に燃えてホットでも結構ですが、現実的な行動はクールでなければいけない」という。そして、「短気は敵なり、怒らず、焦らず、諦めず」。色々な経験から関社長の大きなキーワードになっていて、苦しい時に思い浮かべるという。

「社員の皆さんは社長の先生」

 関社長の社員に対する考えが窺えるのが「楽しくなければ仕事じゃない、やりたいことを任す、失敗しても文句は言わぬ、責任は全て社長がとるから思いっ切りやってください」「社員の皆さんは社長の先生、社員からの情報および意見および提案は会社繁栄の源」という2か条だ。
「社員には責任感が生まれていますし、私の思い付かないようなアイデアで関家具の新たな魅力を生み出してくれていると思います。これからも好きなことを思いっ切りやってほしい。それが一番です」

カリスマ社長 ≠ ワンマン社長

 経営者として、そして、人としてのカリスマ性が関社長にはある。しかし、それがワンマン社長であることとは決してイコールではないのは、関社長が魂の入った商い「商魂」を大切にしているからだ。
「第一はお客さまに喜んでもらうこと。そして、働く皆さんが生き生きとやれて生き甲斐を感じること。自分だけが儲けるような商売では長続きしない。仕入れたところも、売ったところも、自分も喜ぶという『三方良し』を本気でやらなければいけない。それが商いの魂だと信じてやってきました」
 アフターコロナの世界、そして、多様性が求められるこれからの時代。会社という組織の中で、社員の自主性、主体性、能動性が今よりも重んじられる時代になることは確かであり、「新時代の経営とは何か」という問いの一つの答えが「ザ・関家具イズム」なのかもしれない。

株式会社 関家具  
www.sekikagu.co.jp

関家具が販売する個室型フォーンブース「Kolo(コロ)」も、社員が海外の展示会で着想を得て日本向けにカスタマイズして生まれたプロダクトだ。大きな工事は必要なく設置でき、防音、換気などの環境が整備された空間で仕事ができる。コロナ以前にオフィス内でのテレビ会議や営業電話をするためのスペースとして開発された商品だが、コロナ禍における人と人との接触を最小限にするための個室としての利用が注目されている。Milli(ミリ)、Solo(ソロ)、Midi(ミディ)、Duo(デュオ)の4タイプ5サイズを展開している。 
※Milliは2021年6月末発売予定

関家具経営の心得13か条

1.

社員への言葉「楽しくなければ仕事じゃない、やりたい事を任す、失敗しても文句は言わぬ、責任は全て社長が取るから思いっ切りやってください」

2.

棺桶に片足を突っ込み、後の片足を突っ込む寸前まで火の魂の様に生きる。

3.

お客様満足、社員満足、地域社会貢献の三方良しの精神を旨とする。

4.

健全経営を心掛け、「創業以来53年間赤字なしの経営を連続」これを堅持する。

5.

常に健康増進に努める。酒タバコやらず、毎日早朝腕立て伏せ、スクワット、腹筋運動、逆立ち歩行のトレーニングを継続し、二十歳の体型・スリーサイズを維持、血管、血圧、及び五臓六腑異常なし、骨密度同世代平均比133%を維持。

6.

「怒らず、焦らず、諦めず」の精神を旨とする。

7.

「クールに、ビジネスライクに、感情抜き」の精神でビジネス展開。

8.

ミッション、パッション、ビジョン。常に高い志を持って会社経営に邁進。

9.

順境時に驕る事無く、逆境時に乱れ落ち込まず、泰然自若、「夷険一節」を旨とすべし。

10.

経営者は一年365日ハードワーク。

11.

社員の皆さんは社長の先生、社員からの情報及び意見及び提案は会社繁栄の源。

12.

毎年国内及び欧米の主要都市の新しい業態&繁盛店を視察 研修し活かす。

13.

会社を潰すな、油断をするな、危機意識、緊張感を常に持て。