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newdo Column

第二回

地方創生は何のため

地方創生が声高く叫ばれているが、何のために、そして結局何なのかを考えてみる。その目的は、日本社会がかかえる大きな2つの課題、「少子高齢化」と「過密過疎化」にどう対処するかであろう。そして明治に始まる経済と社会の近代化は、それまで人々の生活を支えてきた地域の共同体を壊してきた。この共同体を再生することが地方創生の要になると思う。
近代化の極みに達している現在では、生活必需品、教育、介護、冠婚葬祭、はては娯楽まで、ほとんど市場にたよっている。カネを払って買っているのである。それでカネが必要になるので、カネを稼げる都会に出ていくようになり、過密過疎化のスパイラルが生じた。そして都会では子育てが難しいので少子化になる。
近代以前の伝統的社会では、生活にかかわるほとんどのものは、共同体の中で「結い(ゆい)」と「舫(もやい)」の関係から生み出され配分されてきた。そして祭は共同体の結束を固めると同時に大きな楽しみであった。祭りでは、歌の上手なものが歌い、踊りの上手なものは踊り、芝居も上演された。村人は芸人でもあったのである。しかし今は鑑賞する消費者になっている。アメリカのアーミッシュが話題となっていることからも近年の伝統的共同体への関心の高さがうかがえる。アーミッシュは、自動車や電気などの使用を拒否するなど、近代文明に一定の距離をおいて信仰の共同体を維持している。結いと舫の濃厚な人間関係や大家族構成が、そこを訪れる人を魅了している。人口30万人そこそこのところに年間2000万人が訪れて、2000億円を落とすという。
これから再生しようとする共同体は、もちろんかっての村落共同体が持っていた負の側面である閉鎖性や封建的なものがあってはならない。

そこに所属することで質の良い生活が実現できる楽しいところでなければならない。そのような共同体再生の手本として鹿児県鹿屋市串良町の柳谷集落、通称「やねだん」が注目されている。
「やねだん」のリーダーを務めるのは柳谷自治公民館長の豊重哲郎氏(79)で、25年前か住民と一緒に、休耕地でカライモを栽培し、それを原料にして焼酎を醸造するなど独自の事業を展開していて、いままで約7000万円の財源を生み出している。「地域づくりに補欠はいらない、全員がレギュラー」をモットーに117世帯226人
全員参加で行政の補助金に頼らない「自治」を実践している。また、地域づくりのリーダーを育てるために、2007年から「やねだん故郷(ふるさと)創世塾」を開設しいる。すでに1100人が受講し、全国で活躍している。

筑後川入道(左)と豊重哲郎氏(右)
やねだんオフィシャルWeb
http://yanedan.com

〈筑後川入道・九仙坊(きゅうせんぼう)プロフィール〉 久留米大学名誉教授、一般社団法人筑後川プロジェクト協会代表理事。入道とは俗界に身を置きながら仏門に帰依すること。筑後川入道と名乗ったのは、目的を果たすために従来のしがらみにとらわれず、自由に発想し、自由に生きるため。このコラムでは、忌憚のない“筑後川入道”の生の声をお届けします。