地方創生が声高く叫ばれているが、何のために、そして結局何なのかを考えてみる。その目的は、日本社会がかかえる大きな2つの課題、「少子高齢化」と「過密過疎化」にどう対処するかであろう。そして明治に始まる経済と社会の近代化は、それまで人々の生活を支えてきた地域の共同体を壊してきた。この共同体を再生することが地方創生の要になると思う。
近代化の極みに達している現在では、生活必需品、教育、介護、冠婚葬祭、はては娯楽まで、ほとんど市場にたよっている。カネを払って買っているのである。それでカネが必要になるので、カネを稼げる都会に出ていくようになり、過密過疎化のスパイラルが生じた。そして都会では子育てが難しいので少子化になる。
近代以前の伝統的社会では、生活にかかわるほとんどのものは、共同体の中で「結い(ゆい)」と「舫(もやい)」の関係から生み出され配分されてきた。そして祭は共同体の結束を固めると同時に大きな楽しみであった。祭りでは、歌の上手なものが歌い、踊りの上手なものは踊り、芝居も上演された。村人は芸人でもあったのである。しかし今は鑑賞する消費者になっている。アメリカのアーミッシュが話題となっていることからも近年の伝統的共同体への関心の高さがうかがえる。アーミッシュは、自動車や電気などの使用を拒否するなど、近代文明に一定の距離をおいて信仰の共同体を維持している。結いと舫の濃厚な人間関係や大家族構成が、そこを訪れる人を魅了している。人口30万人そこそこのところに年間2000万人が訪れて、2000億円を落とすという。
これから再生しようとする共同体は、もちろんかっての村落共同体が持っていた負の側面である閉鎖性や封建的なものがあってはならない。